「あるびれお」の測定器AT1320Aの『検出下限値』について

7月以降いろいろな測定をして、「あるびれお」のAT1320Aの性能のことがいくつか分かってきました。今回は、『検出下限値』についてお伝えします。

AT1320Aは、5月のソフトのバージョンアップにより、バグも取れたとのことですし、ずいぶん使いやすくなりました。「あるびれお」の正式発足の7月に間にあって本当にラッキーだったと思います。特に『検出下限値』が表示されるようになったのは、測定結果の意味がよく分かり、またお客様に結果をご説明しやすくなったと思います。

『検出下限値』とは、検体の中にその値以上の放射性物質が含まれていれば、その放射性物質が「ある」と分かるという値です。逆に言うと、その値以下の放射性物質しか含まれていない場合は、「ある」か「ない」かは分からないということになります。ですから『検出下限値』は低ければ低いほど良いということになります。

 

AT1320Aの『検出下限値』は以下の3つの要素によって一義的に決まるようです。

①オペレーショナルバックグラウンドの値。これは1ヶ月に1回程度測定している測定室の周りからくる放射線の量です。バックグラウンドの放射線量が多いほど、『検出下限値』は上がります。この値は「あるびれお」ではほとんど変化していません。

②試料重量の値。放射性物質の測定結果の表し方が、1kg当たりのベクレル量なので、必然的にこれが効いてきます。試料重量が重いほど、『検出下限値』は下がります。

③測定時間。長時間測定をするほど、『検出下限値』は下がります。

 

「あるびれお」における実際の『検出下限値』ですが、試料重量が1 Lで1kgの場合(例えば玄米)は、30分測定ではCs137+134合計6.9Bq/kg。1時間測定では5.2Bq/kg。2時間測定では4.1Bq/kg。10時間測定では2.9Bq/kg。また、試料重量が500gの場合は、『検出下限値』は2倍以上になります。普通の食品の場合、1Lのマリネリ容器には、1kgは入りません。700gで30分測定ではCsの『検出下限値』は合計10Bq/kg程度になります。AT1320Aの『検出下限値』10Bq/kgはこのあたりからきています。

 

お米など毎日たくさん食べるものは、なるべく放射性物質の量を減らしたいものです。そのためには、測定時間は1時間以上で測定したくなります。また1Bq/kg以下の『検出下限値』で測定したい場合は、AT1320Aのようなヨウ化ナトリウムシンチレータ方式の測定器ではなく、ゲルマニウム半導体を用いた測定器を使う必要があります。ゲルマニウム半導体測定器は、世田谷CRMSにこの9月に導入されました。現在は測定体制の構築中とのことで、依頼を受けて測定するのはまだ先になるとのことです。心強い味方がまた増えました。「あるびれお」は世田谷CRMSを応援しています。このゲルマニウム測定器についても、新たなことが分かりましたらこの欄でもお伝えできたらよいと思っています。

内藤誠

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