放射能のことを地域で気楽に語り合える機会があれば――
あるびれおの活動は気になるけど、測定員になるのはハードルが高いし――
これまで公開講座や測定に来られた方々から、このような声をよくお聞きしました。
ならば!と、立ち上げたのが、「わいわい寺子屋」。
第一回を、5月12日(日)、下宿地区会館の和室にて催しました。
今回は、代表・土方隆一による「食べものの放射能を測る話」、
顧問の山田真先生による「放射能が健康に及ぼす影響」、
測定員でもあり、「つながろう!放射能から避難したママネット」代表・増子理香さんによる「福島から避難している人の思い」の、豪華三本立てです。
会は、土方がお手製のATくん人形を持ちながら歌う
はかっちゃう わかっちゃう ルルルル
おやさい おにく おこめに のみもの
みーんな ぼくが はかっちゃうんだよ
という「ATくんのテーマ」(作詞・作曲、土方)からスタート。
土方がパネルをもとに、放射能の基礎知識や、東電福島原発事故の概要、あるびれおの放射能測定についてなどを解説しました。
つづく山田先生からは、医療に携わり、被災された方を実際に支援なさっているからこその、密度の濃いお話が。
かいつまんでご紹介すると……
・原発事故以前から、日本の医療被ばくは過剰。
・紫外線がそうであるように、人間の許容量の限度というのは個人差が非常に大きく、放射能についても安全な基準などない。
・ホールボディカウンターや食品の放射能測定でセシウムの量は言えても、それがその人にとって安全かどうかは言えない。また、セシウム以外の放射性物質はわからない。
・内部被ばくは臓器に放射性物質がとどまって放射線を出し続けるというもの。生物学 的半減期があると言われるが、これも個人差があるようだ。
・放射能による健康被害は特徴的な症状がない。子どもの甲状腺癌は稀なためチェルノブイリではそれだけが原発被害によるものとされ、それ以外の因果関係が認められる健康被害はないとされてきた。だが世界の被ばく地で、長期的にみると低線量被ばく・内部被ばくの影響が。注意深く検査、追跡を続けなければならない。
といったお話でした。
医師として現場に足を運び、丹念に先行研究にあたられ、「わからない」ということに誠実に向き合う山田先生。
山田先生は、今後の継続的な支援のため、「原発事故子ども・被災者支援法」を実体化させるべく、力を尽くされています。
最後に登場したのが、増子さん。
チャーミングで素敵ママの増子さんが語られたのは、笑顔の向うにある非常に厳しい現実、今も続く苦悩でした。
震災後、津波被害は大きく報じられましたが、福島でも大きな揺れによるたくさんの被害が発生していたそうです。
それに加えて起きたのが、放射能の問題でした。
放射能をめぐり家族の中で高まる摩擦。学校・行政から出される指示への疑問。
その具体的なエピソードは、増子さんがおっしゃるように「地獄絵図」。
体験した方ではないとわからない苦しみに満ちていました。
そのような状況にあって、葛藤の末、避難という行動を起こしたお母さんが、増子さんをはじめとして大勢います。
しかし、避難後、慣れぬ土地に暮らし、母親一人で子育てする大変さに加え、家族の分離をきっかけに始まる夫のDVや浮気、経済的な問題など、多くの方が新たな困難に直面しているそうです。
増子さんは、自死や虐待の危険すらあるお母さんたちに「生き続けてもらいたい」と願い、「つながろう!放射能から避難したママネット」の活動をされています。
増子さんは特別な支援ではなく、地域のママ友としてつながることから始まる支えあいの可能性を示唆してくださいました。
7月に西東京市で開催予定の「福島避難者こども健康相談会」も、地域の人たちと避難者の方たちがつながるチャンスです。あるびれおも相談会を応援しています。
土方、山田先生、増子さんと、密度の濃い話の後は、フリートーキングの時間となりました。
西東京市に来られた避難者の方を支援されているNPO生活企画ジェフリーの理事長さん、
農業を始められた避難者の方や地元農家とのコラボレーションを工夫されている「所沢・市民放射能測定所とこらぼ」事務局の方、
小さなお子さんを抱え、試行錯誤の中で暮らしていらっしゃる方など、
参加された方、みなさんがそれぞれに、震災、被災地への思い、放射能への思いを率直に語ってくださりました。
学びあり、出会いありで、盛況のうちに終わった「わいわい寺子屋」第一回。
次回開催も検討中です。