2021年度あるびれお報告会

10月1日にzoomで、あるびれお2021年度報告会を開きました。2021年度にあるびれおでは以下のような活動をしました。

<1> 食品及び環境放射能測定 <3.11から10年プロジェクト>
東北大震災で東京電力第一原発の爆発事故が起こってから10年が経ちました。あるびれおは2012年7月から市民から依頼された食品の放射能測定を続けてきましたが、この数年間は食品のセシウム値が下がり、依頼数が減りました。食品の放射能は減ったが、我々が住んでいる環境の放射能を測ろうと2020年末から<3.11から10年プロジェクト>を始めました。

西東京市内の全域の土を測ろうと、市民に呼びかけてきました。

2021年度の測定結果

食品の測定はこの1年間で6件でした。福島県から送られた白米、こごみ、タラの芽、近隣の野菜も測定下限値以下でした。

土壌の測定は、計41件(2021年30件、2022年現在まで11件)行いました。

乾燥中の土
西東京市土壌放射能マップ

最も高かったのは、側溝にたまった土でセシウム137が1460Bq/kgでした。次に高かったのは、雨どいマスの土で同じくセシウム137が1320Bq/kgでした。どちらも原発事故以降ほとんど移動することなく、ひとところにとどまって濃縮されたのだと思います。原発事故から12年目の今でこの数値なのですから、事故当時の値はどれだけ高かったのでしょう。こんなホットスポットがあちこちにあるということです。高い数値が出ることを予測して測った側溝や雨どいマスではなく、一般的な庭の土でも、400や600Bq/kgという場所がありました。すべては、測ってみないとわからないことです。

 セシウムを吸収しやすいゼオライトを雨樋下、雨水マスに設置して、定期的に測定し、環境の放射能汚染の指標とします。参加者は現在23人。半年に1回測定して、また元の場所に戻すというサイクルで、これまでに計46件(2021年27件、2022年現在まで19件)の測定を行いました。こちらの分析結果は、現時点ではまだよくわからないというのが正直なところです。継続的な測定を繰り返して、セシウムの蓄積の推移をグラフ化できるようにと考えています。

雨樋下に設置したゼオライト

 放射性物質は時間が経つにつれて崩壊し減ります。セシウム137は半減n期が30年、セシウム134は半減期が2年です。3.11から11年後の現在、セシウム134はセシウム137の2.7%の割合まで減っています。AT1320Aで土の測定をした場合、精密に測定できるゲルマニウム測定機の結果と比べて、高めのCs134の値が表示されることが知られています。土の中に2011年以前から含まれている自然放射性物質の影響を受けるためです。あるびれお内で議論を続けてきましたが、土の測定結果はセシウム134の値を記した土の測定データを発表しています。今後、この件について検証を続け、経過について追ってお知らせいたします。


 2022年6月5日に西原自然公園の空間線量を測定しました。ここでは市民グループが椎茸の原木栽培を行っており、2018年椎茸からCs137が14.3Bq/kg 検出された場所です。Cs-134は測定下限値以下でした。公園内7箇所を測定し、Radi PA-1100による測定結果は地上5センチで0.022~0.036μSv/時間、地上1mで0.021~0.029μSv/時間でした。

西原自然公園の空間線量測定

 西東京市では市内を2㎞メッシュで区分し、小中学校・保育園・公園の5か所と武蔵野大学の計6か所で2011年7月から2018年3月まで測定を続けてきました。市内6か所では地上1m0.027~0.09、地上5㎝0.027~0.009μ㏜/hでした。いちばん高かったのは2011年11月8日に碧山小学校図書館脇の雨樋下で観測された0.43μ㏜/hでした。この値は除染の基準値0.23μ㏜/hを大きく上回るもので、その後除染して毎時0.11μ㏜まで下がりました。

2018年4月から2020年3月までは保谷庁舎の市民広場で、2020年4月以降はエコプラザで測定を継続中です。エコプラザで測定するようになってからは 地上1m0.037~0.054、地上5㎝0.04~0.069μ㏜/hありました。

<2> 市民講座

1. 2021年9月11日に放射線衛生学者・木村真三さんを講師に「東京電力福島第一原発事故から10年〜被災地福島のいま〜」とのテーマで公開講座(市民企画事業)を実施しました。

参加者は講師・スタッフなど含め37名。コロナの緊急事態宣言を受け会場の定員は40名から30名に、7名の方が別室でのモニター聴講となりました。

木村さんは福島第一原子力発電所事故後、直ちに勤務先の労働安全衛生総合研究所に辞表を提出して福島へ入り、サンプルを採取。原子力工学の専門家と連携して、いち早く放射能汚染の実態を国民に伝えました。その後、郡山市にNPO法人放射線衛生学研究所を開設して、放射能測定を行い、住民の側に立った活動、提言を行ってきました。

木村真三さん公開市民講座

木村さんの講座では①地震・津波は想定外ではない原発を立地するために安全性より利便性が優先されていたこと。②原発被害者が裁判で訴えていること。一部勝訴したものでも判決内容への疑問を知り、市民がこれから必要となるものは何か。③原発の危険性を伝える小・中学生向けの放射線教育について。④甲状腺・健康調査などで科学者の役割が果たせていないこと。⑤野生の山菜・キノコなどまだまだ気をつける必要あり、内部被ばくの測定、汚染を伝えること。基準値の緩和は、消費者の被ばくリスクを上げることになる。などを学びました。

後日、別室でのモニター聴講をされた方を対象に木村真三さん講座の動画記録を見る場を設定しました。

2.  2022年2月13日、福島で被災当時から測定を続けてきた「ふくしま30年プロジェクト」のメンバーを招いてオンライン講座を開きました。

全国各地の市民放射能測定所からの10人を含めて40人が参加しました。

ふくしま30年プロジェクトは2011年3月の事故直後、福島市で市民による放射能測定を開始したNPO法人CRMS市民放射能測定所福島を母体としています。2014年に「行政に代わるセカンドオピニオンを提供する非営利組織として30年の長きに渡って放射能を監視し、福島での暮らしを回復するために、学びの場を提供する」ことを目的として名称を変更し、現在に至ります。理事長の佐原真紀さん、事務局長の清水義広さん、理事の平井有太さんからオンラインで話を聞きました。

オンライン講座<ふくしま30年プロジェクトの10年のあゆみ>

食物や土の放射線値を測るAT機やゲルマニウム半導体検出器で食物や土の放射能値を、ホールボディカウンターで体内の放射能値、ホットスポットファインダーなどで空間線量を測定して、市民に情報を提供しています。

また、子どもたちが空間線量計で自分達の遊ぶ場所を測り、食品を刻んで放射能を測る体験をするなど、放射能を体感し考える力を養ってきました。

10年後の今でも食品放射能基準値超えの山菜や野生キノコがメルカリなどで販売されています。各地にある市民放射能測定所のネットワークで放射能値を測定し、保健所や県庁、マスコミなどに情報提供し消費者に注意を促しています。

全国の測定室が測定したデータを一元化したデータベースを作り『図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集』を出版しました。放射能をまず測ることから、一人一人が自覚的に考え、選ぶことができる社会の実現を目指しています。

<3> 測定員勉強会

 測定員希望者が増えたので、月1回、オンラインで勉強会を開いています。放射能とは?放射能を測るとは?10年間の食品放射能値の推移などを学びました。

八王子はかるわかる広場は2012年から八王子で市民放射能測定所を開いて測定を続けてきました。あるびれおと同じ機種であるNAIシンチレーションカウンターのAT機を使用していることから、測定員に講義をお願いしてきました。はかるわかる広場の10年間にわたる測定の蓄積を知ることができました。

<4>  地域活動

2021年11月20日から12月12日に地域の環境団体と共にアースデイ西東京秋のフェスティバルを実施しました。あるびれおは12月5日(日)西原自然公園で開催された「憩いの広場」に参加、原発・放射能・測定結果などのパネルを展示、土壌・ゼオライト測定への協力を呼びかけるチラシを配布しました。

アースディ西東京秋のフェスティバル

その後、決算報告、来年度の活動計画と予算について話し合いました。

2022年度も引き続き、食品と土、ゼオライトの測定を継続し、市民講座等を企画していきますので、どうぞご協力をよろしくお願いします。

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