福島から届いた梨

福島の知人の方が、梨を一箱、お送りくださいました。今が旬の豊水。「サンシャインいわき梨」の地域ブランド名がついている名産品です。

福島県内の果実生産者の方は、放射能の低減に大変な努力をなさっていると聞きます。一昨年、昨年と比べ、放射性物質の含有は格段に違うだろうと想像しつつ、せっかく市民放射能測定所の測定員をしているのだから、自分で確かめてみようと、届いた翌日の9月28日に測ってみました。

皮を剥いた大玉2.5個をフードプロセッサーにかけると、ちょうど1リットル。

それを90分測った結果は――

Cs-137 下限未満(検出下限値1.66 Bq/kg)

Cs-134 下限未満(検出下限値1.55 Bq/kg)

ゲルマニウム測定器とは比較になりませんが、それでも、90分でこれだけの下限値まで追い込めるATくん(AT1320A)。なかなか優秀です。ところがATくんは、下限未満であっても、「放射性濃度」という数値を出してくることがあるのです。

今回も測定結果シートの「放射線濃度」の欄には、「Cs-137 1.39 Bq/kg」「Cs-134 0.61 Bq/kg」と記載されていました。ここで、ちょっとドギマギしてしまうのが、未熟な測定員の私。Cs-137と Cs-134の比率が、東電福島原発事故由来の比率と似ているのが、なんだかイヤな感じです。しかし、それぞれの数値には、「絶対誤差±1.07 Bq/kg 統計誤差76.8%」「絶対誤差±0.97 Bq/kg 統計誤差>100%」と、あわせて明記されています。

そこで、深呼吸してシートを見直し、測定講座で学んだことを復習。測定の結果は「下限未満」であり(同様の結果が一般的には「不検出」と記されますが、誤解を招く表現と言えるでしょう)、「放射性濃度」として記載されている数値は誤差が大きく、考慮に値しない。放射能の存在を示すピークも検出されていない。つまり、この測定結果をもってしては、放射能が「ある」または「ありそう」とは決して言えません。

しかし、「ない」とも断言できないのが放射能の測定です。ただ、もしあるとしても、今回のケースでは、95%の確率で、下限値のセシウム合計の約3Bq/kg(1.66 Bq/kg+1.55Bq/kg)を上回ることはない、ということになります。スイッチひとつで放射能の「ある」「なし」がわかると思っていた3年前の自分から、遠くに来ました……。

いただいた梨は、測定結果がどうであろうと、食べるつもりでいました(結果次第では、子どもが食べることは考慮しようと思っていました)。大事な梨でした。梨を送ってくださったのは、この春まで西東京市に避難されていた方でした。原発から30km圏内にお住まいで、事故直後には屋内退避の指示が出された地域です。震災直後、その地域の人口は大幅に減り、医療の提供にも大きな混乱が続き、持病のある奥様の治療のため、東京にいらっしゃいました。今年の4月に地元へ戻られましたが、8月下旬、奥様が逝去されました。西東京市でご近所にいらっしゃったときも、戻られてからも、折々交流が続いており、「(亡くなった)かあちゃんの気持ちだから」と送ってくださった梨でした。

みずみずしく甘い梨をいただきながら、奥様の50代での若すぎる死が思い返され、残念でしかたありませんでした。西東京市に腰をすえるまで、転々と場所を変えての避難生活。当初、山形に逃れたときは共同生活で、そのメンバーの中では一番若い女性だからと、病身ながら食事づくりを任されていたとうかがいました。2011年の4月に予定されていた重要な治療も、受けることができなかったそうです。もし、震災がなかったら、原発事故が起きなければ、こんなにも早く病が進まなかったのではないかと想像せずにはいられません。原発事故の被害は、放射能汚染だけではありません。ただただ、悔しいです。

測定員 渡部朝香

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